リマスタ オープンスタジオ07 長井美冬彩「Bones,sea,and dancer.」

うっかりブログで告知をしないまま会期が始まりそして終わってしまったのですが、5月に開催したリマスタ オープンスタジオの長井美冬彩さんの個展「Bones,sea,and dancer.」の展示写真をアップします。
長井さんは1991年生まれのアーティストで、私が講師で行っていない間の東京造形大学絵画専攻の出身。なので直接指導していたわけではないのですが、mimeで私も参加した4人展を開催したときに運営メンバーだったりした縁もあり卒業制作は拝見していました。大作のペインティングとインスタレーションを組み合わせた卒制は印象深くその後も楽しみにしていたのですが、なかなか発表の機会がないとのことだったので、だったらウチでどうでしょう?と話しての今回の開催となりました。

本展では彼女が体験したことと童話ラプンツェルの物語とその伝播から読み取ったことをモチーフとして、そこから抽出されたキーワードを一部をレディメイドの素材の組合せによって、一部を手作業によって、一部をペインティングで具現化した作品群を組み合わせたインスタレーションが展示されました。イメージが観客と共有できるもの/できないものの間で揺れ動き、またそのしつらえによって空間が偽・部屋のようにも感じられ、良い意味で落ち着きのない場が生じていたように思います。

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リマスタ オープンスタジオ07 長井美冬彩「Bones,sea,and dancer.」
2017年5月25日(木)〜6月4日(日)
http://nnngi.tumblr.com

東京造形大学 概念表現研究指標3年選抜展「新宿の目」

会期:2017年11月2日(木)―18日(土)
時間:10:00―17:00
会場:東京造形大学 CSギャラリー
出品:一ツ柳恋路、井上将大、砂長美智、高久秀美、高林真実子

私が非常勤講師を勤めている東京造形大学で、学内のCSギャラリーにて担当コースの学生選抜展を開催しています。

本展は担当コース・概念表現研究指標で、関わっている教員5人による協議でアトリエでの制作状況をみつつ学生を選抜しています。もともとは概念表現研究指標3年選抜展という殺伐としたタイトルだったのですが、気がついたら学生が自分たちでタイトルを付けて展覧会イメージも作ってくれていました。自主的に発表の機会を良いものにしようとしてくれたことがなんだかものすごく嬉しかったりします。

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以下、出品学生についてのコメントです。本人がそう語ったわけではなく、私の勝手な認識です。あいうえお順で。

一ツ柳恋路さんはおそらく造形大で過去遡っても最高齢の学生、60歳越えの男性です。ご本人がエロいわけでなく、憧れとしての昭和のエロ(エッチと表現したほうがしっくりくる)な文化要素を中心に、ダジャレ起点で日々物体化しています。彼自身はおそらく意識的に行っているわけではないのですが、世代ギャップと美大にいることで自然に身についてきた美術的な造形言語の組合せで文脈が混濁した感覚があるのが面白いのです。

井上将大さんはずっとペインティングを制作しています。人とのコミュニケーションで感じていることを起点にそれを抽象的なドローイングやペインティングにしようとしていたのですが、最近部分的に具体的なイメージを扱いはじめて、とたんに伝わりやすくなった気がします。ハサミを敢えて切られる対象である紙に描くなど、扱う素材にも意識を向けるようになってきているのもいいですね。

砂長美智さんは今回、「トランス」をキーワードに映像作品を制作しています。彼女の中でそれに結びつきそうな素材―お祭りや仮面、激しい動き、などなどを撮影してつなげています。目の付け所は面白いのですが映像制作に慣れていなくて編集で操作できるはずのところができていないのが惜しいところです。

高久秀美さんは素朴に美しい、きれいと彼女が感じた対象を、写真を介しつつ具象的にキャンバスに描いています。イメージをトレースするのではなく、絵の中の状況や色彩を操作して、絵画的感覚として作り上げることを覚えたことで飛躍的に面白くなりました。そして最近は描いたあとの絵画作品を空間に設置することで描いたときとはまた別の感覚が生じていくことに興味が湧いてきているようです。

高林真実子さんは興味を持った物語(と、それの演じられ方)を絵にしています。今回だけ見るとわかりづらいのですが、彼女はスタイルを固定的なものと考えていなくて、以前は偽児童画を描いていたりもしました。描くことも一種の演じることと考えているのかもしれません。

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一ツ柳恋路「ちりめんジャコメッティ―風味の証明 歩く赤いハイヒール」
※表面にちゃんとちりめんじゃこが貼ってあります

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井上将大「scissors, on paper」ほか

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砂長美智「トランス」

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高久秀美「寂光」「気配」

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高林真実子「わかりあう愛はふたりの国」ほか

可展面のあたり(後期)

会期:2017年10月31日(火)~11月26日(日)
休廊:月曜
会場:Nadiff WINDOW GALLERY(東京)
参加作家:伊藤誠、小野冬黃、冨井大裕

恵比寿にあるNadiff A/P/A/R/TのWINDOW GALLERYにて、5月に刊行したペーパークラフト集「ペーパークラフトによる彫刻」参加作家による小展示の後期展示が始まっています。「ペパクラに類する作品」ということで集まった作品たちで、伊藤さんは1999年にエディション・ワークスで制作したポップアップの仕組みを用いたシルクスクリーン作品、冨井さんと小野さんはこの展示のために制作した新作を展示しています。ぜひご覧ください!
ペパクラ集「ペーパークラフトによる彫刻」も店内で販売しています。そしてkomagataカレンダー2018も販売しています。


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伊藤誠

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冨井大裕

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小野冬黃

NADiff Window Galleryでは、2017年5月に発行されたペーパークラフトによるマルチプル集「ペーパークラフトによる彫刻」の参加アーティスト、伊藤誠、上田良、小野冬黃、末永史尚、冨井大裕、山口麻加、計6名のアーティストによる作品展を前期・後期の2部構成で開催致します。

2017年春に、ペーパークラフト、略してペパクラにアーティストが取り組んだマルチプル集のリリースと展覧会が、末永史尚と副田一穂(愛知県美術館学芸員)の共同企画で名古屋に於いて実施されました。本展は、「ペーパークラフトによる彫刻」展の第二弾企画となります。

ペーパークラフトで作品をつくる、という今回のプランが発想された事の次第は、2014年に愛知県美術館のARCH展で担当していただいていた副田が、木村定三コレクションの図録に自ら設計したペパクラを付属させたほどのペパクラ好きであったことからはじまります。その図録を見た末永も興味を持ち「アーティストによるペパクラ」で展示をしてみたい、と今回のプロジェクトがたちあがりました。

各アーティストがそれぞれの作品性が、ペパクラというメディアに投じられたユニークで楽しいマルチプルです。Window Galleryでのショーケース展示とともに、店内ではペーパークラフトセット「ペーパークラフトによる彫刻」をお買い求め頂けます。

NADiff Window Gallery vol.49 可展面のあたり - NADiff