豊嶋康子個展「輪郭」@秋山画廊みてきた

あまり前情報を持たずにいきなり行った方が楽しめると思うので具体的には書きません。抽象的に。
作品の要素を「モノ」と「コト」でとらえたとき、豊嶋さんのこれまでの作品は「コト」をピュアに追求するためにその邪魔になる「モノ」的な魅力は排除される方向にあったと思う。あるいは、そもそも「モノ」になりえない主題ばかりを選んでいたためかもしれませんが。ストレートにいうと、「コト」を面白い、と思ってもその作品への所有欲は決して働かない作品。

で、豊嶋さんは意識していないかもしれないんだけど数年前からの「割れたものの断片を勝手な解釈で復元する」復元のシリーズは「モノ」的な魅力を持ち始めたなあ、と感じていました。コンセプチャルな要素もある一方、みずから手作業を覚えていくという身体実験の要素が、無意識の造形彫刻へのアプローチとしてみることもできる。
で、今回の「輪郭」ですが、非常に勝手な物言いですがいままでの中で最もキュートな作品群でした。ぼくがムナーリを好きな理由でもある「コト」の魅力が「モノ」的な魅力にまっすぐつながっている状態をなんとなく感じ取ることが出来て、素直に魅かれてしまいます。しかも筋が通っているからといって作品から謎めきが失せるわけでもなく、「彫刻」『版画」「コト」どの面から見ても楽しめました。

作品には値段もついていて、手が届きそうな値段。でも今余裕が…。後ろ髪ひかれつつ会場を後に。