塚本智也くんの個展

ペインティングとドローイングの展示。ペインティングは、人や木のシルエットを隠し/描くように彩度の高い×字のモティーフで画面を覆う。残した下層と筆あとの残る固めの上の層/×字のネガポジ/引いてみるとぼんやりうかぶシルエット、が交錯して目が画面上を漂う。シルエットと明度のバランスが写真から起こしたようにも見えつつ、実際的には抽象表現主義的な語法(マーク・トビーとか)で×しか描いていないという事実が起こす感覚が新鮮。写真的に見えてくる像がロマンティックな甘さに流れて行くかと思いきや、絵の成り立ちが異和を唱えつづけている、その間の往復感のたのしみ。それが成り立つ条件として、最近の絵描きでは珍しく色価の感覚が的確で、原色に近い色を使ってもきちんと画面空間上に位置づけられていることがある。よい展示でした。