αMプロジェクト2009企画 「変成態―リアルな現代の物質性」Vol.2 揺れ動く物性 冨井大裕 × 中西信洋 

会場:gallery αM http://www.musabi.ac.jp/gallery/
会期:2009年6月13日(土)〜7月18日(土)11:00〜19:00 日月祝休 入場無料

ゲストキュレーター:天野一夫(豊田市美術館チーフキュレーター)

■揺れ動く物性
冨井大裕と中西信洋とはほぼ同世代でともに精力的に発表を続けてきているが、関東と関西をそれぞれ主たるベースとしてきていて、これまで一度も会いまみえたことは無い。また一見するならその作品の姿も大きく異なってもいるだろう。
冨井の作品の多くは既製品を駆使していて、それを加えず、引かず、物のツボを刺すように密かな作業で介在し、全く異なる特殊な物体にしている。壁に無数に突き刺した画鋲による擬似的な平面や、エアーキャップの切片の重ねによる彫刻のようなものも、解体可能で、 更新可能な姿をわれわれに見せている。
中西の作品も、われわれの観賞を遥動させる。箱型の内側に粘土で作った造形の余りの空間を取り出す、ネガポジ反転した制作法による立体。すき間を持って、透視可能な無数の横線によるウォールドローイングは、図と地があやふやで何を見ているのかが確定しない。さらに時間層が折り込まれたレイヤーはさらに複雑な空間となっていよう。二人の造形における知覚の経験は他の在り方にも入れ替わる、いわば不断の落ち着きの無さの渦中に在るだろう。
その作品はさしあたっての組成の姿をここに見せてわれわれは不可解な経験をすることになるだろう。
天野一夫