佐藤克久くん個展のこと。

2009年09月05日 〜 2009年10月03日に府中のLOOPHOLEで開催された佐藤克久くんの個展「んーんーんん・ん・ん」について思っていた事を、ほとんど書いていたけどまだアップしていなかったのを思い出しました。ので、加筆してアップです。


佐藤くんは愛知県芸の油画科卒。今愛知で開催中の櫃田伸也さんをかこむ展示にも参加中です。年は一つ上なんだけど最初同い年だと嘘つかれて数年間ずっと騙されていました。いまだに意味が分かりません。最初に会った時(10年前)は彼が愛知から東京に出てきていて、2003年にまた名古屋に戻っちゃいました。でも生まれは広島です。
東京に居た頃はレディメイドの素材を組み合わせた作品、樹脂や石膏を使って既製品を模した作品を作っていました。絵は見ていません。栞展、twitter☆、と展覧会が一緒になることもあったり。そのころの作品も変でした。
名古屋に行ってしまってしばらくして、「字界」展という、愛知県芸の芸術学系の学生が運営して大学周辺で開催した展覧会がありました。ぼくは見に行き、佐藤くんが出品していた作品がものすごく面白かったので、これは東京で展示したい、と思いました。東京にはないなんか変なものがそこで出来かかっているのが感じられたんですよね。
結局、ぼくが卒業した東京造形大の絵画棟の学生運営のギャラリー「node」に企画を持ち込んで佐藤くん、山本明子さん、冨井大裕くんの3人で展示をセッティング。それが「material mixture」展です。



手前のみかん箱(ふつうの段ボール箱を白く塗り、みかん箱のように描いてあり、そのまま宅急便で送ったもの)と奥の人形が佐藤くん、壁の桃の絵が山本さん、中央の銀色の立体が冨井くんの作品です。佐藤くんの作品、やっぱり意味が分かんないです。でも、いまでもこの展示は大好きですし、この時出会った事/人、みんな楽しい思い出です。これが2005年末のこと。
今年の初めに、高橋信行さんの個展を見に名古屋に行きました。夜行バスで往復するハードスケジュールでしたが、最後に佐藤くんの家にもちょっと遊びに行き、アトリエを見せてもらったら、こんどは絵を描いていました。そのときの流れのものが今回の個展で並んでいます。
あのとき見てわからなかったことですが、今回の作品群で僕が興味を持ったのは「まっとうに描こうとしていない」絵です。上記の流れをみてもわかるように、絵を描くことを一度完全に放棄した事で、「描く」アプローチが絵描きの入り方のパターンとは異なるものを身につけているように感じました。例えば、絵具をキャンバスで挟んで描く、描いたものをカットアウトする、等など…。それらの絵は、コントロールしきれていないというか、描き手が予期せぬ出来事を画面上で呼び起こし、それに心を動かされた痕跡がそのまま提示されていているように見えました。逆にいえばまだ絵具の扱いがこなれていないと言う事もできるけど、「絵画っぽい身振り」を捨てたうえで、絵具やそれに付随する素材で絵をつくることができるということに触れた最初の驚きのようなものがそのままあらわれている気がしていて、「絵ってこれだけでもいいんだよ」と言われているような、そんな作品で。じつは身の引き締まる思いでみておりましたよ、ハイ。



DMの画像、勝手に貼ります。


TAB イベント - 佐藤克久 「んーんーんん・ん・ん」