ART IN TIME & STYLE MIDTOWN VOL.9 西村 智弘企画 イクタスVOL.1 千葉鉄也・榎本裕一

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会場:TIME&STYLE MIDTOWN
会期:2010年2月2日(火)-5月28日(金) 11:00-21:00
企画:西村智弘
出品:千葉鉄也、榎本裕一

進化するグラデーション 
西村智弘(美術評論家)


かつてゲーテは、色彩を「生成しつつあるもの、成長しつつあるもの、躍動しているもの、変転しうるもの」として捉えようとした。ゲーテの『色彩論』における色環は有名だが、グラデーションは色彩の本質的な部分に属しているといえるであろう。

グラデーションとは生成のプロセスである。色と色のあいだに境界は存在せず、細かく見ていっても無限の連続があるだけである。「赤」や「青」といった実体があるわけではなく、そうした名称はあくまで暫定的なものであって、本来は言葉で限定することが出来ない。グラデーションは絶えざる変化の過程とともにあり、固定されることからどこまでも逃れるものなのだ。

千葉鉄也と榎本裕一は、グラデーションのみによって作品を成立させている点で共通する。
千葉はイリュージョンの問題にこだわっており、榎本は色彩にこだわっている。彼らは、そのこだわりをストイックなまでに推し進め、余分な要素をできるだけ排除することで、作品はある純粋状態に到達している。しかしこの純粋さは、いわゆる絵画の純粋性とは異なる。むしろ彼らの作品は、各自のこだわりをどこまでも突き進めた結果、一般的な意味での絵画とは異なる別のもの、美術にとって未知の表現に向かっている。

ぼくの企画した「マスキング展」と期をほぼ同じくして進行していた同じくらいかそれ以上にアクロバティックな西村さん企画の「グラデーション展」。展覧会のことを知ったときにはお二方ともそれぞれ知人でありながらこうやって「グラデーション」というタームで結びつくとは!という驚きがありました。