マケットのシリーズ

ぼくは初めて展示をする会場で展覧会をやるときはかならずその会場のマケットを作るようにしています。
描かれた絵と会場のサイズの関係をはかったり、何点くらい会場に作品が収まるのか、などを計算することもあるのですが、単純に模型作りが楽しい、といったことも動機のひとつにあったりします。大きな空間がデスクトップに収まっていくその様をみていくのは何とも楽しいものです。
今回も名古屋の個展会場も初めてかつ複雑な空間だったので、模型をつくって眺めていたのですが、ある瞬間にふと「これは空間の記録という意味で空間の絵画といえるのかも知れない」という考えにとりつかれました。ちょうどぼくはパネルを自作するようになっていて、パネル絵画も立方体と認識する感性が芽生え始めていたので、模型をそのまま六面体のパネルへと変換する姿が思いうかんだのです。
造っているうちに、多くの展覧会場が立方体であることと、絵画が立方体であることについて思いはめぐります。会場を立方体とした各面の図面を絵に変える。角度を変えた面と面の移行の関係を考慮してディテールをとばし、色を考える。
こうして出来た6面絵画は、私にとってのその会場空間の記憶と手の中の出来事があわさった記録であり、この瞬間、この空間に出会えたことの記念に変わるのです。