絵の大きさのこと(VOCA 2013展の出品作について)

今回VOCA展に出品している「タングラム・ペインティング」はシルエットパズルのタングラム・パズルをモチーフにした絵画作品です。60×60cmの正方形をタングラム・パズルの形で分割した形のパネルに描画されており、展示状況によってその形は変化させることができます。今展ではこのシリーズ4点を一組として、壁面にインスタレーションしています。

このシリーズが作られた背景はいろいろあるのですが、その一つには絵画のサイズやフォーマットへの問いかけがありました。問いといっても大仰なことではありません。アトリエは大きくもない、日本の多くの家に飾るには大きすぎ、美術館と大コレクターの元にしか行き先を設定できない、そんな状況で大絵画を作る理由がこれまで日本で制作していて見つけられなかったということ。そしてそのような状況にもかかわらず、虚空に向かって大きな絵を描き続けれけばいい、という近代っぽい画家のモデルにいま従う必要があるんだろうか?ということです。

今回、会場で展示作業をしているときにまわりを見渡してみたのですが、一見大画面の絵画に見える絵画作品が多いように見えて、その実、ほとんどが同じサイズのキャンバスを横につなげて一枚の作品としていることにしていることに気づきました。大きすぎてアトリエから運び出せない等、絵描きがキャパシティを超えた大作を制作するときに使う方法です。今回のVOCAのカタログに掲載されていた審査員テキストはあの画面に入った縦線には一切触れていませんでしたが、私の認識ではこれは組み絵画であり、一枚と見做すのは屏風絵に馴染んでいる日本くらいだと思います(近代の優れた日本画家は屏風絵と一枚絵は混同しませんでしたけど)。しかし本来は分割されていることも作品の要素として見るべきであり、それを意図しないのであれば画家は絵を分割すべきではない、と私は考えています。

上記をふまえてあえて書きますが、タングラム・ペインティングは超積極的な分割絵画です。壁面が大きかろうが小さかろうが展示できる作品として生み出されたこの絵画は、これまでのところ音楽ホールの大空間でも、ギャラリー空間でも、個人宅でも同じサイズの絵画作品が展示できています。数点だったら電車でも持ち運べるサイズの作品ですが、VOCA展の会場で大作と並べても確保する空間は劣らないと思っています。