ものが良い

それなりに年齢を重ねてきたからでしょうか、興味の対象が絞れてきたといいますか、興味のあるところでどんどん深くなってきているといいますか、近年ますますアートシーン的なるものよりも日本の古い美術に関心が向かっておりまして。神社や寺院をまわり、庭園や器をながめ、民芸品について調べ、博物館で狩野派を学びなどすることの愉しみに浸るわけです。あとは、今の絵画と。
そもそも自分が美術に関心をもったきっかけは自分が居なくなっても存在してくれる何かを残したい、だったのです。私が語らずとも物が語れば良い。私がいなくても、由来がわからなくても、なんやこれ、とどこかで思ってもらえる物が残れば生きていた意味も見いだせるであろうと。そのためには時間を超える可能性があるものがいいし、そのためにかたちを保っていて欲しい。
なので基本的には電気や再生フォーマットがあわないと形をなさない映像作品を作る気もないですし、観客のリアクションに依存するものも興味はさほどありません。制度に依存しないとかたちをキープできない時点で私の作品としての理想からは外れてしまうんです。
基本は、時間を超えて人が作るものの不思議さ、その営為に触れていることです。
超保守&反動的なスタンスですが、こればっかりはしょうがないんですよ。