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ワークショップ「モランディのわざを解剖する」を開催しました

東京ステーションギャラリーで開催中のモランディ展関連イベントとしてワークショップ「モランディのわざを解剖する」を開催しました。講師は私の他に、宮嶋葉一さん、横山奈美さん。
内容は私がモランディがモチーフとして使用していた物の模型を同じサイズで制作し、その模型を使って参加者といっしょに台の高さ、視点の位置、採光の様子を探ってモランディが制作した際のモチーフセッティングの状況を検証していく、というものです。
モチーフの制作に際してはカーサ・モランディの協力を得てサイズを教えていただいたのですが、なにぶんやや大雑把なデータなもので、作業は写真やモランディの作品図版を定規で測って計算して…というとても地味なものでありました。微妙な曲線を持つ花瓶に至ってはほぼ彫刻を制作しているような感覚です。
しかし苦労の甲斐あってセッティングが出来たモチーフではまさにモランディの作品と同じような光景をつくることができました。作品数枚分のモチーフを制作したのですが、ある作品ではモランディがモチーフのセッティングでどんなに「遊んで」いたのかがわかり皆で驚きを共有できたなど、とても楽しい瞬間がありました。

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モチーフを制作した私も、またモチーフを目にした方も、思うことはモチーフが意外と大きい=静物画ではいかに小さく描いているか、ということです。そのほとんどが半分くらいのミニチュアに変わっているんだな、ということが絵とモチーフを並べてみると体感的に理解できます。一方、風景画において使用していたトリミング用のフレームも同じサイズで用意していたのですが、こちらでは遠くの風景をかなり拡大していたことがわかります。5センチ位の窓に切り抜いた風景を静物画より大きなサイズのキャンバスに描いていたわけですから、静物画と風景画でサイズの扱いがいかに異なっていたのかがわかってくるのです。
このように、サイズや距離について体感的にモランディに近づく感覚を共有したうえで、会場からの質問や講師の間で意見交換も出来ました。静物画の小ささについて、宮嶋さんよりシャルダンの影響についてのご意見もうかがえるなど、充実したイベントになったと思います。


「作品を制作しないお客さんに芸術作品を観念的な言葉以外の方法で伝えるにはどうしたらよいか?」という課題に対して答えを一から探っていったがゆえの新たな試み。なにぶん先例がないために直前まで不安半分興奮半分での実施であったのが正直なところでした。しかし結果的には多くの部分で成功していたと思います。
何よりこのメンバーで出来たことが楽しかったし、参加者の皆様にも恵まれましたことが大きかったと思います。素晴らしい機会でした。
心残りがあるとすれば一般向けのワークショップのため深い話に入り込めなかったところもあったことでしょうか。「いかに下手に描こうとしていたか」「銅版画と油彩画の構造的かかわり」「キュビスム」「なんでこんな面倒なプロセスで描いてたの?」ということについてもあまり深く話せなかった気がします。これはこれでいつか別に機会をつくれたらいいな、とも思っています。
そして東京ステーションギャラリーでの展覧会はいよいよ今週末まで。20世紀の画家の中でもトップクラスの技をじっくり見ることのできるまたとない機会ですので、未見の方は絶対に観たほうがいいです。調べれば調べるほど、見れば見るほど恐ろしいのに楽しい画家なんですよ、モランディ。


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