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私の属する空間

抽象的な形態の作品が展示されている展覧会の会場で作品を探しながら目を凝らしているとき、作品でないものを作品だと思い込んでしまっていたと気づくという経験があります。そんなときは思わず作品を誤認していたことの恥ずかしさで「誰かに見られてたかな…」と周囲をチラ見したりなんかして。
私にとってそれの初期というか初めての経験はまずは1994年、まだ吉祥寺にあった頃のギャラリーαMでの伊藤誠さんの個展でした。ほの暗いビルの通路の先にあるギャラリーにたどり着いて作品を見ようとしたとき、ドアの周りにあったものを作品だと思い込んだまま鑑賞を続け、見続けるうちにあれ、と思い作品データを確認してハッとした、という。
また、同年にギャラリーQでの坂崎隆一さんの個展では、ギャラリーがそもそもはビルの部屋であるという会場の仮設性を逆手にとった空間の扱い方をした作品を見ておりました。こちらは明確に「普通の鑑賞」を逆手に取った作品なのですが、作品を前にいつもの作品/非作品の境目の判断とは異なる対応を迫られ、自分の判断の成否に自信がなくキョロキョロしてしまった記憶があります。
今思えばそれらは作品に台座や額縁がないことの効用としての現実空間への侵犯の感覚であり、作品を観るということが外界から遮断された真空で行われているわけではないこと、生活と地続きの、私の属する空間で見ているのだということをあらためて認識させられた、そんな経験であったように思います。
以上、20年以上遅れた展覧会レビューでした。

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