「アーティストの1日学校訪問」

今年の後半はとにかく東京都現代美術館の「アーティストの1日学校訪問」のプログラムに多くエネルギーを注いだような気がします。私も関わるまでこの企画の存在を知らなかったのですが、「アーティストの1日学校訪問」とは東京都現代美術館の教育普及の企画で毎年度作品を所蔵しているアーティストを1、2名選んで都内の学校に生徒との交流を目的として授業を行う事業です。
www.mot-art-museum.jp
今年度は私が担当アーティストに選ばれ、10月から各地で実施しています。
対象は小学校から高校まで、各校に私の授業例を記載した用紙で募集をし、応募があった中から最終的に6校に絞ります。応募は私が思っていたよりも多く、とてもうれしく思うと同時に行けなかった学校が多かったことを申し訳なくも思いました。
12月半ばを過ぎて6校中4校の実施が終わり、ちょっと一息ついたところです。

選定時に「とにかくまんべんなくやろう!」と思ったのが良かったのか悪かったのか、小学校4年生から特別支援校から高校3年生まで、地域もできるだけ分散させつつ選んだため学校ごとにかなり異なる内容となり、毎回異なることを考えることにました。予想外にハードだったのは、学校でいうところの2時間の実施なのであまりゆっくりとはできない、かつ私はアドリブが苦手な人間なのでそのぶん準備を綿密にやらないといけないということです。人数が少なくても多くてもつい準備が必要なことをやってしまいます。そして、選んだところがたまたまそうだったのか、東京都のレベルが高いのか、あるいはすべての学校がそうなのかわかりませんが、どの学校の先生もとてもいい先生ばかりでして、私なんぞが関わって良くなる余地があるのだろうか、と思うくらい皆さんしっかりと造形教育に向き合ってらっしゃるわけです。その先生がたのご期待もなかなかのプレッシャーとなって準備に時間をかけてしまうのです…。
ちなみに時間をかけるとはどういうことか?というと、画用紙のサイズ・比率、台の高さ、ライトの選定、ルール、授業前の情報の出し方、全てに気を払う、ということで、私が直接指導することよりも重要だと考えています。

内容ですが、どのようなことをやっているかというと
・影をつかまえる
・身の回りのものを一度ジェッソで塗りつぶしたあと元の色で塗る
・身の回りのものと同サイズの箱をつくり、簡略化して塗って学校空間の中で展示する
・一度描いた絵をタングラムの形に分割して組み替えて別の絵をつくる
というような感じです。


あとこれ、私一人では全くもって成り立ちません。東京都現代美術館の教育普及のスタッフさんたちの協力があって授業内容の検討から実施までできています。

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授業のテスト中

本プログラム以外にも学校との取り組みを続けてこられていて、その経験と、学校とのコミュニケーションの積み重ねを私の授業にも活かしてくださっています。
下記リンク先の教育普及ブログの充実した実践例をご覧いただければ、東京都現代美術館の教育普及の方がたのこれまでの活動を知ることができますので、ぜひご覧ください。
http://www.mot-art-museum.jp/blog/edu/

さて、まだ途中ですが実施してみてどうだったかというと、月並みな感想ではありますが私の企図をこえたものが毎度帰ってくるのがとにかく楽しい、という一言に尽きます。人数が多いとすべての参加者が楽しんでワークするというわけにはいかないのですが、それでもほとんどの子どもたちが熱中して楽しんでくれます。そして出来てくるものが面白いです。
面白い、という表現も難しいのですが、「良い・悪い」の基準がはっきりしないのが私の企画でして(そのため毎度コメントに困るのですが)、普段の図工での良し悪しとルールがことなる授業の経験が、短期的なものではなくいつか効果を持ってくれるといいな、と思っています。
年明けの2校もまた異なる雰囲気の学校で、心をキリキリさせながら楽しみつつ準備しています。