1998年にロンドンに行ったとき

学部4年。卒業を前にいろいろな煮詰まりを解消したくて本場のコンテンポラリー・アートを見るぞ、と思ってロンドンに10日間の一人旅。なぜロンドンだったか、といえば「古いものも新しいものも両方あるから」。ニューヨークには20世紀以降のものは山ほどあれどそれ以前の伝統的なものはなさそうだし、イタリアは伝統的なものはあるだろうけど同時代で魅力的なものは少なそう。あとはロンドンかパリ、となったら英語の国の方がいいかな、なんて理由でした。

行って何をするか、といえば毎日破り持ったBTのロンドン特集の地図ページを参考に、詰め込みスケジュールで主だった美術館、ギャラリーをひたすら観て回る。ナショナル・ギャラリー、TATE Britain、V&A、サーチ、RCA、サーペンタイン、ホワイトチャペル、アンソニー・ド・フェイ等々…。あと一日だけロンドンを離れてストーン・ヘンジを見に行ったり。で、見ていて思ったのは、ロンドンのコンテンポラリー・アートをまとめて見るところが無かった、ということ。
後にTATE Modernが出来たので今ではTATE、なんだろうけどコンテンポラリーを見ようとすると当時はまだギャラリーを細かにまわっていくしかなかったと思う。結局見たかったギャリー・ヒュームやドイグの絵、ハーストの作品はは見ずじまいで。
ちなみにギャラリーでもサーチはyoung american artist2展(トム・フリードマンが光ってた)、ド・フェイはリヒターとUKからすれば外国人ばかりだったし。サーペンタインはオフィリやってたけど。


翻って日本、東京。海外からやってきて日本のコンテンポラリーをまとめて見ようと思えば東京都現代美術館に行くしかないと思うんだけど、コレクションは東京都美術館から移ったもの+開館時、開館直後に購入したものが中心。石原都政以降都からの購入予算はゼロで、展覧会を契機に寄贈および寄託されたものしか増えていない現状。2000年以降の美術はフォローできていないので、年々シーンから距離が生じている。つまり「同時代まとめ見」機能は果たせない状況になりつつある。

本当は国立で安定したコレクションを構築できる美術館があるのがベストなんだろうけど、あたらしくできた新美術館は基本は公募展用のハコ+近現代美術の企画展示施設。この機会に出来なかった以上、もう現代美術館なんて出来ないだろうから公には日本のコンテンポラリー・アートはゆっくり死ね、と言われているようなもの。明るい未来ですな。