イタヅさんとこでのリトグラフ制作時のメモ

モティーフは印刷物。手元にあった古い雑誌から手当たり次第に図版部分をスキャンして拡大。とりたててなんにもない部分で、トリミングするとやや間の抜けた印象のところをピックアップ。とりあえず一枚描いたところでその絵のバックグラウンドに同じ素材で重ねる事を思いつく。
2版重ねたけど両方とも同じ写真。ほぼ同じ部分を角度を変えてもう一版描いていた。
ほんとうは一版描き、刷ったところで次の版、と進めたいところだが、今回イタヅさんとの共同作業で限られた時間とタイミングの中で決定しなくちゃいけないので2版の関係は頭の中で想像して色も想定する。あらゆる意味で主役のいない絵。層の上下関係が不分明で目が泳ぐ状態。バックグラウンドは上の層よりやや明度低め、上の層は白が多く、下の層と重なった部分の色で一色増えて見えるように。
そんなことを考えながら一版目はうす緑、顔料で考えるとビリジアン+白。ただ上の層との関係で決めるたいのに上の層の色は脳内にしかないので色味決まれど明度を決めるのも想像力次第になるので決めかねる。結局アルシュとBFK、紙を変えて濃い/薄いで4枚刷ってあとに備えるかたちに。
上はなんとなく補色をずらした調子でうすいピンクと思っていたけど下の色が刷れたところで薄々の桜色が良いと思ったので工房にあった刷り色の記録から肌色をみつけてそれを参考に色を作ってもらい。ここでめちゃくちゃ時間使う。で濃い色のアルシュのほうに刷り。刷り上がって、見つけてしまった肌色に引きずられて桃色のイメージから離れてしまったことにも気付く。また長考。思い切ってピンクの方に振り戻すことに。でまずBFKの薄色、次にアルシュの濃色。計3枚出来。ここで並べてみると今度は最初の肌色のも悪くなく見えてくる不思議。印象が弱いと思っていたけど乾いてくると強くなった。また長考。
ここで試し刷り最後の一枚を肌色に戻しても面白みがない、とイタヅさんなので思い切って過去を振り切って変える方向で。思いつきの「ほとんど白に近い灰色」を薄色、アルシュに。
4パターン出来。一枚を決めなきゃなのだけどひた悩む。一長一短。額の上に置いたり並べ替えたりを繰り返すけどふるいにかけて落とすことも出来ん。悩み30分以上。最後はアルシュの二枚の間で悩み。濃緑に薄肌色と薄緑にほぼ白の灰色。で、結局は最後の薄肌色と薄緑にほぼ白の灰色onアルシュ。「時間をかけて作った色の組み合わせを見せる絵」であることよりも、間の抜け具合と見ている人がイメージを補う余地を優先したつもり。押し付けがましくしないこと。ただたっぷり白を使った組み合わせなのでちょっと弱いかという気はいまもしている。