引込線 2015

「引込線(旧所沢ビエンナーレ)」に前回に引き続き参加いたします。今回は実行委員としても関わり、参加者のお声がけからキャプションのカットから2次会の手配まで、何から何まで自分でやるしかない状況で自作も作る、運営もする、というハードな時間を過ごしました(今も過ごしています!)。伝わっていないかもしれませんが、助成で足りない分は作家も執筆参加者も参加費を払って参加しています。その上で依頼ではないものを発表する場を共有しているのがこの場所です。
そんな中で「引込線とは何か」という自問は常にありました。私の現時点での回答らしきものは「世代や立場を越えた交流の場」です。実行委員でそもそもこの場を作った中山正樹さん、戸谷成雄さん、遠藤利克さんら発起人らとは密な交流とも言えない距離感のままですが、それでも作品を設置する姿や諸々のアクシデントへの対応から見えてくるものはただ作品を見続けていただけではわからなかったものです。もちろん若い世代の作家からもたくさんいい刺激を受け取っています。誰かが中心になってディレクションするでもなくこんな場所が存在している、このユニークさを噛みしめたいなと思っています。


昨年、日本美術オーラル・ヒストリー・アーカイヴに中山正樹さんへのインタビューが掲載されました。
その中で所沢ビエンナーレの開催についても語られています。収録は2010年なので少し前で、第1回展のあと、第2回展前のタイミングでのことですね。長いけど、引用します。

加治屋:所沢ビエンナーレが始まったきっかけを聞きたいのですが。まず運営体制についてお伺いしてもよろしいですか。


中山:今は、基本的に実行委員会主催で、所沢市が共催という形でやってもらってるんです。実行委員会って言っても、実行委員と運営委員がいて、実行委員は運営委員を兼ねるんです。僕が実行委員長で、メンバーは戸谷、遠藤、多和、高見沢、建畠(晢)、伊藤(誠)がいるんですけど、それが2年もやったので、あんまり継続して公募団体みたいになってもいけないっていうんで、実行委員をもうちょっと広げようと今考えていて。まだ決定はしていないんだけど。何人かは降りて、何人かは続けようと。作家も今度広げていこうとしていて。来年やる予定でいるんです。作家選別は、今回も反省もあったりして、声掛けをどういうふうにしていくかっていうのを考えていかないといけないなって。


加治屋:今までは運営委員の人が声を掛けていたと。


中山:推薦は実行委員でみんなにしてもらって。プレ展(2008年)の時は最初だったのでああいう形でやったんですけど、1回展(2009年)の時はプレ展に参加した人は全員参加して、それ以外にっていうことでやったんです。今度は2回目になるので、プレ展に出した人とか1回展に出した人とかに関係なく――もちろん2回展に出す人もいるかもしれないけど――関係なくもっと広げて考えていこうと。それをどういう形でやろうかと。まあ、民主的にやるとつまらないものになっちゃうかもしれないし、誰かがキュレーターみたいな形でやるとこれがまたいいのかどうか。普通の展覧会と変らないじゃないかっていう話もあるし、その辺はまだ結論が出ていないんですよ。これは市のほうも協力してもらっているし、会場も西武鉄道に協力してもらっているものですから。まあ、僕とか戸谷や遠藤がやっているから協力してくれているんだけど、それが別の人たちになると今まで通りにはいかない、というようなことを言われるので、遠藤と戸谷と僕とは残らざるを得ないなという感じはあるんです。それから、どういうふうにしていくかっていうのは、もうぼつぼつやっていかないといけないって思っています。何回続けられるのかっていうのも分からないですよね。あの会場を使わせてくれるのか。会場ありきなんです。まあ、あまり長く続けてもしょうがないなって感じはあるんですけど、でもまあ後2、3回はやりたいです。


坂上:継続することも大事ですよね。


中山:そうなんだけどね。あんまり継続してもさ、だらだらになっていっちゃうし、その辺難しいところだよね。


坂上:すごい面白くって、最初は飲み会みたいなので、中山さんと戸谷さんと遠藤さんと多和さんの4人が話していて、多和さんの作品に対してみんなが「お前の作品(本来あるべき美術とは筋が)違うだろう」みたいなことを言っていて、「だったら俺たちみんなで並べてみようじゃないか」って話し合ったって私は聞いていて。その時に、所沢市のほうに、その時に小学校か何かの跡地があって、そこを使いたいなと中山さんたちが思って、それで所沢市のほうに「ここ使わせてもらいたいんだけど」って言ったら、所沢市のほうが、「そうじゃなくって、西武鉄道の引込線っていうのがあるからそこを使ったらいい」って逆に提案してくれたんですよね。


中山:そう。紹介されて、あの会場に行ったんですよね。ところが最初、市のほうもそうだったし、西武鉄道のほうも何だか全然乗り気じゃなかったんですよ。市も、果たしてどうなるもんかみたいな感じだったんだけど、やってみたら世間の評判がすごくあったんで、みんなびっくりして、協力的になったんです。1回目の時なんか、特に西武鉄道のほうは、この人たちは何をやろうとしてるんだろう、みたいな感じだったんだよね。


加治屋:市から助成を受けたりはしなかったんですか。


中山:助成は市からはもらっていないですよ。そりゃ何百万も出してくれるんだったらいいんですけど、何十万程度なんですよ。そうするとかなり制約も出てくるから、それだったらもらわないで、こっちで集めてやろうっていうことで、いらないって言ってるのね。なんかね、他にいろんな所沢市の団体があるらしいんですけど、そういうところ以上に出すわけにはいかないって言うんですよ。そういうところに出ているのは、50万とかそういうものなんだよね。その程度でかなり制約が出て来てね、市民を入れろとか、前も言われたんだけど、それは入れなかったんですよね。市の在住作家とかいるじゃないですか。そういう人たちを入れてくれとかね。そうなってくると全然違って、本当に公募団体みたいになっちゃうから。


加治屋:カタログが分厚くて、非常に充実したものでした。作家と批評家の両方が入っていますよね。あれは、批評家はカタログにおいて活動するということですか。それとも会場でも何か批評活動を……。


中山:いや、カタログのみ。書き手の人たちはそれを自分たちの表現ということでやったらどうだろうっていうので声掛けて。それで、賛成してくれる人は書いてもらうという形なんですよね。
http://www.oralarthistory.org/archives/nakayama_masaki/interview_01.php


この前の作家による自主企画展についての証言も非常に興味深かったのでご一読をおすすめします。

しかしこの部分、もっと参加作家も執筆者も共有できてたらよかったかな。

中山:そう。あそこで何か代表作品みたいなものが出て来てくれたらいいなって思うよね。それを自分が作りたいんだけど。自分じゃなくても誰でもいいんだけど。若い作家でも誰でも。あの作品っていうようなものが出てくればね。



http://hikikomisen.com/2015/information.html

展覧会期:2015年8月29日(土)~9月23日(水)※会期中無休
開場時間:午前10時〜午後5時
開催場所:旧所沢市立第2学校給食センター(埼玉県所沢市中富1862-1)
入場料金:無料


参加美術作家:石井友人、伊藤誠、遠藤利克、利部志穂、喜納洋平、構想計画所、篠崎英介、白川昌生、末永史尚、五月女哲平、多田佳那子、津田道子、土屋貴哉、戸田祥子、冨井大裕、戸谷成雄、中山正樹、保坂毅、水谷一、百瀬文、吉川陽一郎


参加執筆者:阿部真弓、荒川徹、粟田大輔、石川卓磨、石崎尚、井上幸治、梅津元、OJUN、勝俣涼、住友文彦、高嶋晋一、高橋永二郎、田中功起、谷新、成相肇、能勢陽子、橋本聡、平井亮一、眞島竜男、桝田倫広、峯村敏明、森啓輔


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