南条嘉毅個展「甲州道中」

会場:ギャラリーエス
http://galleryes.com/
会期:2006年12月12日(火)-17日(日)

取材を元に、取材先の土を素材に風景をステンシルで描くスタイルが固定しかけていたけれど、新作はさらにアクリルによる部分的な描写が加わった。大半の作品は「加わった」ところに留まっていたのだけれど、会場奥の2点は描写の面積が土の面と面積が同じくらいのためか、白地で抜いた部分との関係が画面の整合を妨げていたためか、誰の絵でも味わったことのない奇妙な空間をもつ風景画になっていた。なにかが生成された時に発せられる新鮮さもあって、久々に未知のものを見るように人の絵をじっくり見てしまった。とても面白い、と思う。ただし、これは確実に「絵画」としての面白さなので、彼のやってきていたコンセプトに基づく素材のリテラルな提示と整合するかどうかはまた別の問題になってしまうかもしれない。ぼく個人としては、この絵ならではの視覚の楽しみの創出に踏み込んだ状態は歓迎したいし、より深めてみてほしいと思った。