油彩画を描かなくなった理由

いつもコメントをいただいているヒグチさまからの質問へのお返事です。

ところで末永さんは油絵ってやった事ありますー?あるとしたらどいうしてやめちゃったんですか?
http://d.hatena.ne.jp/kachifu/20080511/p1#c1210643043

10代の自分にとっては絵を描く=油絵だったので、そもそもは油絵から描きはじめました。高校時代〜大学4年まではバリバリ油彩派でしたね。ただ大学3〜4年次に自分の制作に違和感をいだきはじめていろいろ考えた結果、油彩画が自分には合わないなと考えたわけです。
たとえば油彩画も日本で言えば漆塗のように、正しい技法ーデッサンがあり、下地があり、明暗があり、ワニスがありーというものが本来はあるわけです。印象派によって崩れちゃいましたけど。で、それこそ山口にいた時代から油彩画を学んでいたわけですけど、それを学んで知ってしまうと絵の作り方の発想がその枠を超えられなくなってしまうわけです。で、それは静物画や、風景画を描くのにはむいてる技法だけど、まだ見つけられていない自分の描くべきものには向いていない感じがしてて。
そこで一旦学習した技術を忘れるべきだな、と思い至りました。そのときには本当に色々試しています。ペンキで描く、エナメルで描く、写真を撮る、FRPで立体もつくる。ただ、それもポロックやギャリー・ヒュームをトレースしている感覚があったんですよね。こりゃやばいな、油絵と変わらんなと。
結果的には、自作アクリル絵具にいきつきました。正確には、顔料を水で溶き、アクリルメディウムを混ぜたもの、ですけど。アメリカには自作アクリルキットのメーカーがあるんですよ。ちょうどその頃輸入業者さんが大学に売り込みに来ていて、こりゃいいなと。
アクリルが良いのは、重みがあんまりないことですね。物質的にも歴史的にもペラペラなこと。ある絵描きさんがぼくの絵を「カスカス」と言ってくれたことがあります。お陰で自分でも絵の状態をフォーカスしやすくなりまったので、とても有り難い言葉だと思っています。

重厚な油絵には今も憧れがありますが、自分としてはそこには憧れつつ自分には出来んとフラストレーションを溜めてる状態が一番健全なんだと思ってます。