東京造形大学 概念表現研究指標3年選抜展「新宿の目」

会期:2017年11月2日(木)―18日(土)
時間:10:00―17:00
会場:東京造形大学 CSギャラリー
出品:一ツ柳恋路、井上将大、砂長美智、高久秀美、高林真実子

私が非常勤講師を勤めている東京造形大学で、学内のCSギャラリーにて担当コースの学生選抜展を開催しています。

本展は担当コース・概念表現研究指標で、関わっている教員5人による協議でアトリエでの制作状況をみつつ学生を選抜しています。もともとは概念表現研究指標3年選抜展という殺伐としたタイトルだったのですが、気がついたら学生が自分たちでタイトルを付けて展覧会イメージも作ってくれていました。自主的に発表の機会を良いものにしようとしてくれたことがなんだかものすごく嬉しかったりします。

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以下、出品学生についてのコメントです。本人がそう語ったわけではなく、私の勝手な認識です。あいうえお順で。

一ツ柳恋路さんはおそらく造形大で過去遡っても最高齢の学生、60歳越えの男性です。ご本人がエロいわけでなく、憧れとしての昭和のエロ(エッチと表現したほうがしっくりくる)な文化要素を中心に、ダジャレ起点で日々物体化しています。彼自身はおそらく意識的に行っているわけではないのですが、世代ギャップと美大にいることで自然に身についてきた美術的な造形言語の組合せで文脈が混濁した感覚があるのが面白いのです。

井上将大さんはずっとペインティングを制作しています。人とのコミュニケーションで感じていることを起点にそれを抽象的なドローイングやペインティングにしようとしていたのですが、最近部分的に具体的なイメージを扱いはじめて、とたんに伝わりやすくなった気がします。ハサミを敢えて切られる対象である紙に描くなど、扱う素材にも意識を向けるようになってきているのもいいですね。

砂長美智さんは今回、「トランス」をキーワードに映像作品を制作しています。彼女の中でそれに結びつきそうな素材―お祭りや仮面、激しい動き、などなどを撮影してつなげています。目の付け所は面白いのですが映像制作に慣れていなくて編集で操作できるはずのところができていないのが惜しいところです。

高久秀美さんは素朴に美しい、きれいと彼女が感じた対象を、写真を介しつつ具象的にキャンバスに描いています。イメージをトレースするのではなく、絵の中の状況や色彩を操作して、絵画的感覚として作り上げることを覚えたことで飛躍的に面白くなりました。そして最近は描いたあとの絵画作品を空間に設置することで描いたときとはまた別の感覚が生じていくことに興味が湧いてきているようです。

高林真実子さんは興味を持った物語(と、それの演じられ方)を絵にしています。今回だけ見るとわかりづらいのですが、彼女はスタイルを固定的なものと考えていなくて、以前は偽児童画を描いていたりもしました。描くことも一種の演じることと考えているのかもしれません。

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一ツ柳恋路「ちりめんジャコメッティ―風味の証明 歩く赤いハイヒール」
※表面にちゃんとちりめんじゃこが貼ってあります

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井上将大「scissors, on paper」ほか

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砂長美智「トランス」

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高久秀美「寂光」「気配」

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高林真実子「わかりあう愛はふたりの国」ほか