日記

午後から個展会場に。寒い一日でしたが、たくさんの来場者をお迎えできて嬉しく思います。
東京造形大で担当したことのあるアーティストの菊池遼さんが、SNS上で述べてくださった私の個展の感想をご自身のnoteにまとめて公開されていました。
https://note.com/kikuchiryo_/n/n06288af741cb
私が過去にキュレーションした展覧会「控えめな抽象」のステイトメントと今回の個展を接続して考察してくださいました。
また、後半では作品《窓》を例に、絵具や塗りの効果について言及されています。
文中ではありがたいことに私のことを「師匠」と呼んでくれていますが、今回の展示で側面のタレの意味を確認できたのは、昨年菊池さんが何気なく一言で指摘してくれたことがあったのがきっかけだったのでした。既に私も教えられることがたくさんあるんですよ。

タレ効果

絵の側面に絵具が流れてタレていることに気を払いはじめたのは、サーチリザルトのシリーズからだ。インターネットの画像検索サービスで画家の名前を検索し、その検索結果画面を描くサーチリザルトシリーズは、サムネイルとサムネイルの間に白抜きの部分があり、ここが下地の白に白を塗るだけだと画面としてスカスカしてしまう。しかも白抜きは画面の端でもあるので締まりがなくなってしまう。このスカスカをどうにかしたくて一度画面全体に何かしら色を塗ってさらに白を重ねてから描きはじめるようになった。そしてその何かしら色を塗る際にたまたま側面に絵具が流れてしまったのを、しっくりきたのでそのまま残したのがきっかけだったと記憶している。
ただ、どの絵にもタレが残っていることのわざとらしさは自覚していて、使い続けてよいのかどうか迷いもあった。ドット絵の絵画シリーズの最初の方で使っていないのは、タレ無しで作品が成り立つのかどうかを確認したかったためである。
検証の結果は「あった方が良い」となる。サーチリザルトもドット絵の絵画も、どちらもデジタルイメージを描いたものであり、電源を落とせば消えてしまう儚いイメージを絵画という物理的な存在に置き換える絵である。この置き換えの際に絵画の厚みを意識させる要素としてタレが機能しているのかも知れない、というのが今のところの解釈。