ORA-X


ブルーノ・ムナーリを好きになった最初のきっかけは1995年のムサビでのムナーリの展覧会のカタログで見たORA-Xという作品の写真でした。



そのころちょうど、「時間に分単位で縛られるのはいやだ。時計としても機能する色が周期的に変わるだけのオブジェを作れたら楽しいだろう」と思って試行もしていたのですが、ORA-Xはそれを完全に自分のアイデアを超えるカタチで1945年に実現してしまっていました。

絵においては、すでに視覚経験をある程度もっていたのでありとあらゆるものからの影響をたどることができますが、デザインについての知識は全く持っていなかった学生時代のこと。この思考経路についてはインスパイアのされようもないわけで、ものを作る事において時間と空間を超えてシンクロするものを感じた初めての経験と思いショックでした。


ちなみに自分の案は、時計のムーブメントに透過色の円盤を付け光源で半透明のカバーに照らすというもの。FRPでカバーを作ったりしました。


ムナーリは写真のように、3原色の透過色の円盤が、回転する事で白い下地の上で様々な組み合わせで色の配分を変えていく時計を作りました。ポイントは少し抽象化しつつも時計のカタチを残して作品化していることだと思います。時計ともオブジェともとれる中間の形態にすることで、日常生活にとけ込む可能性もきちんと作っています。





ORA-Xは1945年に目覚まし時計を利用したプロトタイプが制作され、1963年にミラノのダネーゼ社からマルチプルとして生産されました。これをダネーゼのショールームで展示している写真が残っているのですが、横一列にずらりと並んだOPA-X.。これがまた河原温のdate-paintingの展示ばりにかっこいいのです。