長谷川繁さん個展「ABSTRACT」@void+リーフレットの本人テキストより抜粋

人々は絵を「読み取る」ことをしたがるが、多くの場合はそれが邪魔をして絵を「見る」ことをしないようにさせているのではないか。描かれているもののー具象であれ抽象であれ、そこに見えている何かに意味付けをして背景にあるであろう物語を探し出し「あぁ、そうなのか」と納得をしたがる。描き手は「これこれはこのようなコンセプトで、、、云々」だとか意味だかを饒舌に語って、それが答えであるかの如き言い訳をする。多くの場合、両者がお互いの満足を満たしたところで理解(したと錯覚し)、めでたしめでたし、、である。そして一番大事であるはずの作品はそれほど見ることはなされず置き去りにされる。

画家はいつの時代も「見ること」を基本に絵を描き進めていく。線や色、筆触が積み重なることで表面を成す。そこはいつも抽象の世界である。表面の物質とイリュージョンがせめぎ合い絵画独自の空間が出来上がる。それを目の当たりにしながら日々制作している画家は、表現することの不可思議さを一番分かっているはずである。説明ですむ話なら生涯続ける価値もないものであるし、やればやるほど「わからなさ」がわかってくるのである。

長谷川繁 「ABSTRACT」 - につき(はてな)