GASBON METABOLISMで美術評論家の中尾拓哉さんが企画した「メディウムとディメンション:Maze」展を見てきました

山梨県北杜市にある、アートを中心にした複合施設GASBON METABOLISMで美術評論家の中尾拓哉さんが企画した「メディウムとディメンション:Maze」展を見ました。参加アーティストは磯谷博史、うしお、長田奈緒、鹿野震一郎、久保田荻須智広、髙田安規子・政子、玉山拓郎、豊嶋康子。
会場のGASBON METABOLISMは工場跡地をリノベーションした広大な空間を展示室、作品倉庫、レジデンスのスタジオとして使用している場所です。ただ、工場リノベといってもニューヨークのDia Beaconのように展示空間として整備されているわけではなくて上記がゆるやかにごっちゃになっているのが特徴的だったりします。


中尾さんの今回の企画では、そこにさらにグループ展ではなく9つの個展(しかもそれぞれにテーマが設定されている)を空間を分けず、平面図を重ねるように同居させていました。
鑑賞者はもともとある雑多なコレクション展示のなかから見つけだしたQRコードで見れるハンドアウト片手に個展レイヤーを読みとっていくことになります。



さらに重ね合わせた個展それぞれに「Re: creation」(豊嶋)、「Re: action」(玉山)等、テーマも設定されています。もともとの条件に適応しつつ通常の展覧会形式への批評性を加え、観光的にスルーされないような構造を作っていました。なおかつ作家の自由を確保して作品がコマのようになっていないのも良かったと思います。





行った日に開催されたトークイベント「「MAZE」とは何か?ー迷路と迷宮をめぐって」も聴講しました。登壇は企画者、出品者に加えてゲストで豊田市美術館学芸員の鈴木俊晴さん。

トークで鈴木さんは自身の思う良い美術館の条件を3つ挙げられていたのですが、その中の一つとして、自分のいる場所が分かりづらい、線的に効率よく移動するようにあってはならないこと…等などとお話されていました。また、中尾さんが度々「複雑」と口にされていたのも印象にのこっていて、そこに美術の展覧会がフィールドに作品を代入されるゲームになってしまうある種の単純さに抗い、(マルセル・デュシャンが実践したような)複雑さを孕んだ構造にしたいという野心が潜んでいるようにも感じました。

メディウムとディメンション:Maze

会期:2024年7月26日(金)- 9月2日(月)
開場時間:11:00 – 17:00
休館:火曜日 水曜日 木曜日
会場:GASBON METABOLISM(ガスボン メタボリズム
住所:〒408-0205 山梨県北杜市明野町浅尾新田12
キュレーション:中尾 拓哉
アーティスト:磯谷博史、うしお、長田奈緒、鹿野震一郎、久保田荻須智広、髙田安規子・政子、玉山拓郎、豊嶋康子

主催:ガスアズインターフェイス株式会社、メディウムとディメンション実行委員会
協力:青山目黒、ANOMALY、M画廊、Satoko Oe Contemporary、Maki Fine Arts

トークイベント:「Maze」とは何か?──迷路と迷宮をめぐって
鈴木俊晴(豊田市美術館学芸員)× 中尾拓哉 × 出品作家
8月18日(日)13:00〜15:00