東京都現代美術館「豊嶋康子 発生法─天地左右の裏表」

東京都現代美術館で「豊嶋康子 発生法─天地左右の裏表」をじっくり再見しました。
この展覧会は豊嶋康子さんのこれまでの作品を振り返る回顧展でありつつ、美術館というルールの塊を題材にした新作展でもあるようにも感じました。
30年のキャリアの中で制作されてきた中で、今回展示された作品は約500点。膨大な量です。
これだけのボリュームであるにもかかわらず、この展覧会では鑑賞者に作品を見させられているように感じさせず、自然と作品を見に行くように動いてしまうのがとても不思議なのです。制作者が知りたいと感じた欲求を作品で実践して解消してくのを追うように、体を動かして近づいていってしまいます。コンセプチュアルな仕事ですが、実践を作品としてパッケージしたり、ベストな見せ方を選択できる技があるからこその、この空間づくりなのだと思いました。


例えばこの写真のパネルの展示ですが、配置のルールが混雑しています。普通はグループごとにルールをまとめてしまうので、こうはやらないものです。でもこの割り切れなさが、鑑賞者がぱっと理解したつもりになって流し見するのを止めているのだと思います。


あるいは可動壁の側面に設置された作品があります。こういう壁は広い面積の2面を「壁」だと思って使うものですが、よく考えれば薄い直方体ですから、幅の短い面も壁なんですよね。なので展示できてしまう。そして思うわけです。「壁」とは何か。


草刈機の作品を壁の裏から見ようとすると紐がかかっていて入れないように感じます。けど、この紐はよく見ると額やパネル作品で用いられている紐。これを作品の一部だと認識すると、別にここに潜って入ることも出来たかもしれません(入りませんでしたが)。

かように、美術館で展覧会を見ている際に見る側が内面化しているルールを揺らしてくるのがこの「新作」のすごいところ。こればかりは実際に見て、経験することでしか味わえないと思います。

豊嶋康子 発生法─天地左右の裏表
会期: 2023年12月9日(土)~2024年3月10日(日)
休館日
月曜日(1月8日、2月12日は開館)、12月28日~1月1日、1月9日、2月13日
開館時間: 10:00-18:00(展示室入場は閉館の30分前まで)
会場: 東京都現代美術館 企画展示室 1F
観覧料: 一般1,400円(1,120円) / 大学生・専門学校生・65 歳以上1000円(800円) / 中高生600円(480円) /小学生以下無料

https://www.mot-art-museum.jp/exhibitions/toyoshima_yasuko/